クリスティーニ AWD バイク
クリスティーニ社のオール ホイール ドライブ バイク(Christini AWD Bicycle)。
綺麗。よく出来ている。
リアホイールからパワーを取り、インターナルドライブシャフトを介してフロントホイールへ伝える。
後輪から駆動を持ってくるのは、変速システムをそのまま利用できるというメリットのせいだ。
パワーは、かなり複雑な経路を経て、前輪へと伝えられる。
しかも、前後ともサスペンションを備える。
画像(左)は、後輪からメインチューブへ伸びるドライブシャフト。
サスストロークを吸収するため、スクエアスプラインを使用している。
螺旋状の塗り分けは、動画用(作動確認しやすいため)。
所で、バイクの両輪駆動化には、2つの問題点がある。
最初の問題点は、コーナーでの両輪差を吸収しなければならないということである。
つまり、曲がるときには、前輪と後輪に回転差が生じる。これを吸収しなければスムースな走行ができない。
分かりやすい例を挙げると、前輪を90度曲げてバイクを旋回させると、後輪は回らず、前輪だけが回転しながら車体が旋回する。実際には走れないが、最大でこれだけの回転差があるということである。
車ではデファレンシャルギア等で回転差を吸収している。
クリスティーニ AWDの場合は、前輪にフリーホイールハブ(ワンウェイクラッチ)を装着することにより、この問題を解決している。
フリーホイールハブとは、バイクの後輪に付いているものだ。
ペダルを踏むと後輪が回るが、踏むのをやめても後輪は回転を止めず、惰性で走行できる。当り前になっているお馴染みの装置である。
では、フリーホイールハブを両輪駆動バイクの前輪に組み込むと、どういうことになるのか?
直線を走っている場合(前後輪の回転差がない場合)、両輪には駆動力がかかる。
コーナーに入り、前輪の回転数が増すと、フリーホイールハブが機能し、前輪への駆動が切れる。これによって、回転差は無視できる。
つまり、回転差を生じるようなコーナーでは両輪駆動はできないのである(!)。
では、このタイプの両輪駆動システムの意味はどこにあるかというと、後輪がスリップによる空転した場合、前輪が駆動する。
コーナーの最中でも、スリップ、ワッシュアウト等によって前輪の回転が止まったとき、前輪の駆動は回復する。
その結果、オフロード走行において、後輪駆動車と比べ走破性は格段に向上する。
次の問題点はトルクステアである。
リアから伝えられたパワーは、ステアリングを経由して前輪を駆動する。
そのため、ハンドルの回転によって駆動力に影響が出る。
片側にハンドルを切った時にはドライブシャフトを回し(順回転)、逆に切った場合はドライブシャフトを逆回する力となる。
順回転の場合は、瞬間的にペダルが軽くなり、逆回転の場合はペダルが重くなるはずである。
クリスティーニの場合、この対策はされていない。
クリスティーニを所有されている方にお聞きしたのだが、問題ないという回答だった。その件に関して、認識さえしていない印象だった。
実際は対策されているか、本当に大した影響がないのか、よく判らない。
最終的には、自分で実際に運転してみないと、実感できないだろう。
クリスティーニのように、内外の回転差の吸収にフリーホイールハブを使うのは、コストと軽量化のためか?。
また、何らかの原因で駆動系がロックした場合の安全対策になる(フロントホイールがロックすると、即転倒につながる)。
しかし、コーナーリング中に駆動がかからないシステムには少々落胆した。
両輪駆動の意味がないのではないかとさえ思った。
この問題の抜本解決には、4輪駆動車同様、センターデフを使用するしかないのか?。
ただ、センターデフを使用した場合、どちらかの車輪が空転した場合、他方は駆動を失うという問題があるが・・。
画像(上から2番目):ステアリング ポスト内を通るドライブシャフト。
画像(上から3番目):フォーククラウン内部のパワートランスファーチェーン。これによって、車体中央を通ってきたドライブシャフトは右フォーク側に移される。
画像(下):前輪を駆動するベベルギア。
下は、最近(2016年)のクリスティーニ社の製品。
Two-Wheel Drive Christini 29er Fat Snow Bike
クリスティーニが南極走行用に開発したバイク。
フロントフォークダウンチューブはチタン。サスは無い。
動力取出し部分。スパイラル-ベベル&ピニオンギアはアルミ製。
フロントフォーク部。アンダーチューブはカーボンファイバー。