興味の壺

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好適環境水

東北の漁港の多くが、甚大な被害を受けた。
漁業再生への大きな可能性が、岡山理科大工学部バイオ・応用化学科 山本俊政准教授の開発した「好適環境水」にある。

陸地での海水魚の養殖では、従来「海水」や「人工海水」が用いられてきた。
海水には約60種の元素が含まれているが、魚にはその全てが必要なわけではない。

山本教授は、2005年から海水の中の、どの成分が魚に必要なのかを見極める実験を繰り返し、完全な海水ではなく、カリウムやナトリウムなど、魚に必要な成分を特定し、それを真水に混ぜた「好適環境水」で、海水魚を育てる事に成功した。

海水なしで、海水魚の養殖ができるのである。
つまり、山村でも、海水魚が低コストで育つのだ。
山村の場合、津波などの被害を避ける事ができ、食料自給率や雇用創出のアップにもつながる。

「好適環境水」のメリット・デメリット。

「好適環境水」は、人工海水に比べ、低コストで作ることが出来る。
しかし、水温を一定に保つために電力がかかる。
(これについては、ゴミ焼却場や温泉を熱源とすれば大幅な省エネルギー化がはかられる)

ただし、常に餌を食べる温度に水温を調整することで、魚が速く育つ。
トラフグやヒラメだと海で育つものに比べ、1.2〜1.3倍くらい早く育つ。
海水での養殖に比べ病気になりにくく、抗生物質を使う必要がない。「好適環境水」中では、少々の傷は治る。 生臭くない。

さらに、山本先生は、「好適環境水」を循環させ、長期間使用する試みを行っている。
濾し取られた、魚の排泄物中のリンや窒素は、有機肥料として野菜の水耕栽培に利用できる。
つまり、同一施設に、魚工場と野菜工場が併設され、新鮮で安全な生鮮食料を山村でも楽しめ、収入にもつなげられるのだ。
(自分が山村に住んでいるために、山村をハイライトしているが、山村にこだわっているわけではない)

宮城県石巻市の漁業関係者から問合せが来ているという。
多くの地域が、この技術の活用の検討を願う。

ただ、国からの反応は鈍いという。
海外―アメリカ、中国、中東等々―多くの国々からは、引き合いが来ている。
日本発の最先端技術が海外で開花する前に、国の積極的な支援を期待したいものだ。

注:「好適環境水」とは―。
塩素を初め、ナトリウム、硫黄、マグネシウム、カルシウム、カリウム 、炭素、臭素、ストロンチウム、 ホウ素、フッ素、リチウム、べリリウム、アルミニウム、スカンジム、チタン、バナジウム、クロム、 マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セン、ルビジウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、銀、カドミウム、インジウム、錫 等々、60種類以上ある海水の成分の中から、魚が生息していくのに必要最低限の成分を選んである。
「好適環境水」は、真水10Lに対して、上記の成分を10g入れると出来上がる。

もう少し知りたい方へ:「好適環境水と養殖の未来」