興味の壺

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トヨタ フリーピストンエンジン リニアジェネレータ

フリーピストンとは、ピストンがクランクシャフトと繋がっていないという事。
つまり、ピストンが自由に往復運動をするエンジンを指す。
この原理を利用したジェネレータ(発電機)を、トヨタ(豊田中央研究所)が開発中だという。

トヨタ フリーピストンエンジン リニアジェネレータ作動図 1構造は、ピストンに取付られた永久磁石が、シリンダー側に付けられたコイルの中を、ピストンと共に往復運動をすることによって、発電を行うというものである。

通常は、エンジンで発電機を駆動して電気を得るが、今回トヨタが開発中のジェネレータには、余計なものが無く、エンジンが即ち発電機であるため、軽量、高効率なシステムであり、トヨタは、EV等への搭載を考えている。

海外のサイトでは、
「No more engine AND generator, the engine IS the generator」
と、紹介されている。

トヨタ フリーピストンエンジン リニアジェネレータ作動図 2エンジン部分は、一見2ストロークジーゼルエンジンのような構造。ただし、スパークプラグで点火する。

バルブは、排気バルブのみで、電磁式。バルブタイミングもプログラムによる。
燃料は、インジェクターで直接噴射され、点火プラグによってイグナイトされる。
点火によってピストンが押し下げられると、シリンダー下部にある掃気穴(エアインレットポート)から、フレッシュエアがシリンダー内に流入する。
更にピストンが移動すると、シリンダーエンドにあるガススプリングの反発によって反復、その時電磁バルブが開き、燃焼ガスを排出する。

トヨタ フリーピストンエンジン リニアジェネレータ構造図

シリンダーとピストンリングは、セラミックコーティングされ、オイルによる潤滑はされていない。
冷却方式は、イラストを見ると水冷のようである。
ウォーターポンプも当然電動。バルブ駆動も電動、よって最低限のメカニカルロス。

始動は発電の逆で、コイルに通電してピストンを動かすのだろうと思われる。

ピストンは、シリンダーエンドからピストン内に伸びるスリーブ上に配置された、ローラーベアリングを介して接触固定されている。

この機械的に非常にシンプルなエンジンは連続使用で、42%の熱効率を達成。
プロトタイプユニットは約13馬力を発生。ペア使用では、トヨタヤリスサイズの車両を、毎時75マイル(毎時120キロ)で巡航させることができるという。

[付録]
EVに於いて、エンジンで発電しながら走行し、航続距離を伸ばすシステムを、レンジエクステンダーという。
つまり、一種のハイブリッド。「BMW i3」等でも採用されている。

マツダも昨年末、ロータリーエンジン(RE)を発電用に搭載した、デミオベースのレンジエクステンダーの試作車を公開した。
静粛性が高く、シンプルでコンパクトなREの利点に着目し、排気量330ccの1ローターREを出力20kWの発電機と組み合わせた。システムはトランクの床下に収まる。走行用モーターやバッテリーはデミオEVをそのまま使用。

低速でのトルクが低く、効率の悪いロータリーエンジンを発電専用として、効率のいい回転域だけを使うことで、軽量なロータリーエンジン良さを生かしたと言える。
ただし、ガソリンタンクは9リットルで、デミオEVの航続距離は200km(JC08モード)だが、エクステンダーシステムで約180kmの延長できる。20Km/Lだから、もう少し効率を上げたい所だと思った。

画像は、「TOYOTA CENTRAL R&D LABS.,INC.」から転載。